◇本格的にスタートした基礎ゼミ | ||
全学教育審議会基礎ゼミ委員会委員長 田中継根 | ||
本学の全学教育改革の目玉の一つである基礎ゼミが本年度から本格的にスタートし、現段階(7月末)でほぼすべての授業が無事に終了しました。ご担当下さった先生方、そして準備のためにご尽力下さった全学教育室に心から御礼申し上げたいと思います。 基礎ゼミを本格的に始めるに当たり、いささか心配したことがあります。学生のクラスヘの振り分けについてです。振り分けシステムそのものは全学教育室の方でしっかりしたシステムを作成してくださったために、混乱が起こることは考えられず、その点では安心していたのですが、問題は一部の授業に学生が集中し、そのため、意に添わない授業を受けざるを得ない学生が多数出るのではないかということでした。ところが、いざ蓋を開けてみると、心配をよそに、学生の志望が驚くほどきれいに分散してくれたのです。担当の先生方がそれぞれに魅力的な講義題目(ということは勿論中身も魅力的だと思いますが)を考えてくださったということではないでしょうか。 総クラス数144という大編成となりましたが、この中には、11人の本学名誉教授がおられますし、また自部局のノルマ以外に自主的に開講してくださった熱心な先生が数人おられます。 講義題目のリストを眺めているだけで、胸が熱くなる思いがします。もう一度学生に返ることができるとしたら、是非出てみたくなる授業がいくつもいくつもあります。私の知り合いで各種の公開講座に積極的に出ておられるある名誉教授の方が、「教わるっていうことは本当に楽しいことですね」と感慨を込めておっしゃっていましたが、そのお気持ちがよくわかるような気がします。ざっと眺めても、例えば「西欧から見た日本文化」、「授業を作ろう」、「仙台の都市問題について考える」、「臨床倫理学入門」、「科学者を目指すということ」・・・恐らく、多くの学生がワクワクするであろう授業が目白押しなのです。きっと実り多い、学生にとって非常に有意義な授業が展開されたことと想像されます。 少人数教育の重要性が多くの大学で認められ、開始されていますが、本学でも試行段階の転換教育Bを経て、いよいよ本格的にスタートしたということです。基礎ゼミの趣旨はと言えば、教官による一方的な知識の伝達ではなく、発表・討論・見学・実習などの体験的・参加型の学習を重視するものであること、教官と学生、また学生相互の人間的つながりの形成を目指すものであること、大学教育へのイニシエーションの意味を持っていることなどとなるでしょう。このような趣旨が全学的に相当程度浸透してきているものと思われますが、もっともっと徹底させる必要があると思います。このことは、学生による授業評価からも明らかです。 昨年度の転換教育Bでの学生による授業評価では、プラスの評価として、「学生が主体的に学べる良い授業だった」、「いろいろな人の人生を聞くことができ、数え切れないことを学んだ」、「実際にものを作ったり、企業を訪問できて非常に興味深かった」など、基礎ゼミの趣旨に添った授業が行われ、それが学生を非常に喜ばせたことがわかる一方、「せっかくの少人数制なのだから、もっとフィールドワークをした方がいい」、「もっと討論が活発になるようなテーマを探して参加できるような授業になればいいと思う」のようなマイナスの評価もありました。基礎ゼミの趣旨に添った授業をすることがまさに学生たちから求められていることがわかります。そのような授業に対しては、「こんな授業を待っていた」とか「毎年やって欲しい」というような、教師冥利に尽きるような評価がたくさん寄せられました。 7月に実施された学生による授業評価はまだ結果が出ておりませんが、昨年度の転換教育Bに比べて段違いの規模で行われた基礎ゼミですから、上に書いたような学生の希望、評価はより明確に現れるものと思われます。楽しみでもありますし、怖い部分もあります。学生による評価を厳粛に受け止めて、基礎ゼミをよりよいものにしていく努力が必要だと思います。授業評価の結果は11月に予定されている基礎ゼミFDの場で、来年度ご担当の先生方にご披露したいと思います。 教えることは、言うまでもなく学ぶことと表裏一体のものです。それは、教えるためには先ず十分な研究が必要であるというだけの意味ではなく、教えること自体が学ぶことであるという意味でもあります。特に基礎ゼミのような少人数・双方向型の授業では(教官もまた大いに学ぶことができるのではないでしょうか?ある名誉教授の方が、「本当に楽しく授業をやっている、学生から教わることも多いんだよ」と、とても嬉しそうに話してくださったことが印象に強く残っております。 基礎ゼミ委員会では、今年度の担当教官全員にアンケートを実施する予定です。基礎ゼミという授業そのものの在り方への注文・提案、授業を遂行する上で遭遇した困難、またいろいろ工夫してうまくいった場合はそれを、更に反省点があればそれも書いていただき、来年度以降の基礎ゼミの改良のために役立てようと考えております。 基礎ゼミをよりよいものにしていくためには克服すべき問題がいろいろあると思います。現時点でわかっている問題点としては、次のようなことがあります。先ず、川内での授業の場合、小教室が足りず、大きな教室でやらざるを得ない場合があることです。ある名誉教授の方から「大きな部屋が当たってしまってとてもやりにくい、来年はもう引き受けたくない」と言われてしまいました。また、学生の希望がきれいにばらけたと上に書きましたが、文系・理系の点で見ますと、文系または理系の学生が集中している授業がかなり多いということです。基礎ゼミの趣旨から言えば、どの授業も文系と理系の学生が適当に混ざっていることが望ましいのですが、実情はなかなかそうはならないようです。募集の段階で、一工夫必要かも知れません。更に、基礎ゼミは多くの学部で必修となっていますが、必修ではない学部も幾つかあります。学部の事情もあるのでしょうが、できれば全学部で必修としたいものです。 私の個人的な夢は、基礎ゼミを自主的に担当してくださる先生がもっともっと出てくださることです。現在は部局の人数に応じた課題数を出していただいているのですが、将来は逆に、部局の人数に応じた課題数しか認めない・・・とはならないまでも、多すぎる課題数が殺到して委員会が嬉しい悲鳴を上げるくらいにならないだろうかということです。基礎ゼミの実施方法に地道な改良を重ね、担当の先生方全員がその趣旨に添った熱心な授業をなさってくだされば、いずれ必ずその成果がはっきり学生の勉学態度に現れるようになるのではないでしょうか?そうなれば基礎ゼミの重要性が本当に全学的に認められるでしょうから、各部局が競って多くの課題数を出そうとする日が来ることも夢ではないかも知れません。 |
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