◇全学教育の感想
経済学部4年生 大澤 幸子
 世の中には何か一つの物事に深くのめり込んでいくタイプと、いろんな事を広く浅くやるタイプの人間がいると思う。私はどちらかといえば後者の人間だ。そんな私にとって大学2年までの全学教育という制度は結構合っていたと思う。経済に関する講義でおもしろい所はもちろんあるけれど、私は経済だけが好きなわけではなく文学も哲学も化学も好きだ。そういう意味では高校までの授業は一般教養なるものをまんべんなくやっているといえるのだろうが、やはりどうしても大学受験を意識した内容にならざるを得ない。だから全学教育での一般教養的な科目は純粋に人の知的好奇心を満たしてくれるものであり、「物を学ぶ」という原点に近いと思う。そこが全学教育の良さだと感じている。

 ただし、そこで学んだ事が自分の中でどれくらい残っているのか、という事には疑間が残る。昔の時間割を出してきて自分の受けた講義を思いだそうとしてみたが、自分がどのくらいその講義に力を入れたかとか、どんな教授だったかというような事は思いだせても、恥かしい事に自分がそこで具体的に何を学んだかさっばり思いだせない。その理由は時間的なものなのか自分の能力的なものなのかと考えたが、周りの人に聞いても大体同じような答えが返ってきたのでどうやらそれだけではないらしい。高校の時までのように、覚える必要性がない事が逆に覚えなくても済んでしまうという作用も生み出してしまう。これは悪い面であるだろう。

 人は時間と共に忘却してしまうが、記憶の中にはっきりと覚えている事も結構あるもので、そういう事はずっと忘れないものだ。私の中にもそういう記憶が当然あって、それらは大抵専門的でこまかい内容よりも、概念的で真理を述べているような内容が多い。こういう事を教えてくれる講義は聞いてて楽しいし、もっと知ってみたいと感じる。残念ながらこのような講義をして下さる方はあまりいない。概念や基礎は飛ばして自分の研究分野に終始してしまう方は意外に多い。全学教育ではやはり入門者へも分かりやすくを心がけて戴きたかったと思う。まず第一歩で興味を持つからこそ更に次へ進んでいけるのだから。もしそうなら(残念ながら私には無かったけれど)一生を変えてしまうような、ほんとにやりたい事にそこで出会う人もいるかもしれない。そんな事が沢山起こったらとてもすごいと思うし、それが最初から勉強の幅を狭めてしまわない全学教育の良さの一つになっていくのではないだろうか。

 何か物事を行うと大抵良い面と悪い面とがあるものだが、両方考えて私は全学教育という制度はいいと思うし、またこれからもより良くなっていってほしいと思っている。これから全学教育で学んでいく人のためにもこれからに期待したい。

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