◇全学教育科目の授業を受けて
文学部4年生  芦田 麻里
 東北大学文学部に入学してから一年間、私は他学部の学生と共に、全学教育を受けてきたわけですが、私にとってのこの一年は、非常に貴重な体験をした一年でした。どの様な点で貴重だったのかと言うと、具体的にその成果などが目に見えて分かる、というわけではありませんが、様々なジャンルに及んだ講義内容からは、学問が実に多様性に富んでいることや、その奥の深さを感じさせられると同時に、自ら探究心を持ってそれらに取り組んでいくことの面白さを教わることができた、という点においてです。

 特に、当時の私は自分がこの先何を専門として学んでいくのかを、はっきりと決め兼ねていたので、比較的自由に自分の思考に合わせた科目選択のできる全学教育の受講システムには、本当に感謝しています。そして実際に、私がドイツ文学科へ進むことを決意したのには、全学教育の第二外国語でドイツ語を履修していたことが、大きく影響しているのです。同じように私以外にも、全学教育が何らかの形で後々の進路決定を左右する要因となった学生は、少なくないはずです。つまり、この全学教育を受講できる一年間というのは、私たちが二年次以降、専門的学問研究へ携わっていく前の、準備期間であるとも言い換えられると思います。

 しかも、その種類の豊富さ故に、過去には学ぶチャンスのなかった心理学や社会科学などの分野をのぞかせてもらったり、文学部に居ながら理系科目の生物学やコンピュータを使用した情報処理の授業に参加できたことで幅広い知識を身に付けることが可能となり、本当にいい経験になりました。

 更に、全学教育が優れていると思うのには、それぞれの講義が、内容的にはどれも専門的であるのにも関わらず、私達生徒にとっては、教養科目の一つであるという事を、先生方も考慮の上で授業をして下さるので、誰でも気軽に受講できる良さがある、という事が挙げられます。しかし、このような状況のもとでは、どうしても学生が受け身の姿勢になってしまいがち、というのも事実ですが、大切なのは私達学生の学ぼうとする意欲であって、裏を返せば、こうした環境の中でこそ、私達の自主性が養われることになる、とも言えます。

 文学や歴史に関するものを始めとして、語学演習や体育実習、教職免許取得を目指す学生の為の教育に関する科目、そしてその他にも実に広範囲に渡っている全学教育の授業は、私達の好奇心を駆り立て、物事に対する新しい見解を与え、見過ごしてしまっていた可能性を発見する格好の場となってくれるのです。

 私はこの一年を通して身に付けた事柄を、単なる過程として終わらせてしまうことなく、これから先の学生生活において、自分自身を更に発展させていく為の原動力として、最大限に活用していけたら、と思っています。
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