◇全学教育科目担当の思い出
国際文化研究科教授 小川 陽一
 1979年から今年度まで、一般教育科目・全学教育科目を担当した。その19年間で担当授業科目の名称は「漢文」「中国の文化と思想」「言語表現と文化」と変わったが、教養教育科目であることに変わりはなかった。

 全学教育科目(もと教養科目)は、幅広い視野と柔軟な思考の涵養を目指して、新制大学の教育の基本にすえられ重視されてきた。そしてその在り方については、東北・北海道地区規模の研究会等でも研究が重ねられたなどして、改善がはかられてきた。しかし、この専門教育科目とは異なる科目のもつ理念・目的の実現は、多くの担当者を悩ませてきたことであろう。そしてそれは、今も変わりないであろう。その理念と目的が、“言うはやすく行なうはかたい”からである。かくいう私も悩み続けたひとりであった。

 授業科目の名称は上記のごとく変わったが、私の守備範囲は中国文学、とくに中国の小説であった。その分野で全学教育の理念・目的の実現が求められるのだが、多様な学部の多様な関心の学生諸君の心を捉えるためには、それに応じた授業の多様な内容と方法が求められた。文学部の学生と工学部の学生とでは、アンテナが異なっていて、同じ発信でも、受信結果が異なってしまう。だから同じ授業科目でも、中身もやりかたも、一様では効果があがらない。それぞれに工夫が必要であった。学生がなにを求め
ていて、それにどう対応すればよいのかという判断は、教育者に求められる当たり前のことなのだが、当たり前のことが一番むつかしい。

 学生個々人の要求に対応しようとするのは困難だとしても、学部単位での対応は可能であろう。全学教育科目の種類・内容・方向性・ねらい等に対する各学部の期待・要望が示されれば、対応はある程度しやすくなるであろう。そして担当者の個人的判断だけに頼るよりも、効果と意義は大きくなるであろう。大学教育研究センターが窓口になって、取り纏めをするなどしていただけないものであろうか。

 以上、思い出に併せて、要望を記させていただいた。
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