◇新入生に贈る未解決問題:情報通信倫理
情報処理教育センター教授  静谷 啓樹
 情報通信倫理とは言ってみたものの、実はそのようなものは存在しないのかもしれません。どうやら倫理のみが漠然と存在するのであって、情報通信倫理とは、計算機やネットワークという環境に整合するように、倫理の諸概念を符号化したものと考えることができます。むしろ、そのような符号化が現代社会に必要とされているそのことにこそ、皆さんがこれから解くべき重要な問題点が内包されていると考えてよいでしょう。

 情報処理教育センターでは、自明なことを大きな声で言うような照れ臭いことをするつもりもないのですが、すべての利用者に次のようなメッセージを伝えています。もちろん、皆さんも利用者です。情報通信倫理がなぜ必要とされているのかが、行間に読み取れるよう配慮したつもりです。万人に共通の統一的な行動規範を提示しているようにも読めるかもしれませんが、残念ながらそれはある意味で真実です。そのような規範は病的な社会状況に付随することが多く、個人の多様性を尊重する私たちの社会の合意と対立します。したがって反発されても仕方のないことです。しかしながらそれでもなお、このようなメッセージを事前に利用者に伝えなければ皆が何となく安心できない現代の情報化社会について、一段高い視座から、最後に深く考えてみてください。

1.「法の遵守」を常に意識してください
●ネットワークを含む計算機上の世界は、情緒的な意味で仮想現実世界と思えることはあっても、法律の及ぶ現実世界です。法律で禁止・制限されている行為を行うことはできません。ネットワークを通じて国外に接続した場合は、相手国の法律も遵守してください。
●情報処理教育センター利用者には「東北大学情報処理教育センター利用規程」(昭和57年規第15号)も適用されます。その第6条では、利用の許可を受けた目的以外に利用することや、自分の利用者番号を他の者に使用させることを禁止しております。
●教育用計算機システムの運用をソフト的・ハード的に妨害する行為、妨害の意図はないまでも他の利用者の迷惑になる行為、あるいは他の利用者に迷惑をかけないまでも、営利目的のプログラム開発環境として利用する行為等があった場合は、上記規程第8条の規定により、利用の許可を取り消すことがあります。
2.「セキュリティ」を常に意識してください
●パスワードやファイルの読み書き許可設定等は、セキュリティのための仕組みです。自分のパスワードを書いた紙を放置したり、秘密のファイルにもかかわらず他人が読み書きできる設定にしてしまったりすると、思いがけない結果になることがあります。また、電子メールに重大な秘密事項や自分の銀行口座番号・クレジットカード番号等を書くのも危険です。
●逆に、セキェリティ破りの行為をしてはいけないのは言うまでもありません。施錠された他人の家に入り込むのは明確なセキュリティ破りですが、たとえ施錠されていなかったとしても、その家に立ち入ってよいことにはなりません。

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