◇志を高くもって国際的な寄与を
大学教育研究センター長  星宮 望
1989年のベルリンの壁の崩壊の衝撃的なニュースを覚えている方が多いと思います。それまでの東西冷戦構造が徐々に緩和していることは世界中で認識されてきていたわけですが、実際に自宅のテレビに映し出されたベルリンの壁の崩壊が与えた衝撃は大きかったと思います。この象徴的なニュースを境にして、多くの人々が「世界が一つである」ことを強く意識したと思います。小生の本職である電子工学の立場からは、TV電波に代表される情報通信システムの発展が「人工的な壁」を容易に越えて人々に情報流通の手段を提供し、壁の向こう側の状況を誰もが入手できるようになり、これを政治的にも止めることが出来なかったと言うことでしょう。いわば、このグローバル化と世界の緊張緩和に電子情報通信システムが大きく寄与したともいえます。このように、科学技術の発達とその有効な活用などにこれからも我々の英知を結集しようではありませんか。東北大学はこのような面では、開学の当初から「研究第一主義」を標榜して、世界的な研究の推進の先頭に立ってきた実績があります。

 新入生諸君も、是非、この良い伝統を受け継いで、人類の幸福と福祉のために活動していただきたいと思います。そのためには、教えられたことを覚えるだけではだめです。自ら何が問題なのかを追求して、自ら解決してゆく心構えを持っていただきたいと思います。時々、「昔のように生活の心配があったときには頑張ったかもしれないが、現在のように、生活上の不満がないときには目標がはっきりしない。」との主張を聞くことがあります。しかし、人類の永い歴史で人々は、「生活の心配がなくなったら、志を高く持つことが出来るだろう。それまで頑張ろう。」と思ってきたのではないでしょうか。今こそ、日本の若者が「志を高く掲げて」国際社会で活躍するチャンスの時期です。新入生諸君の21世紀における飛躍と人類への貢献に期待します。

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