◇健康心理学との出会い
文学部3年生  高橋 あゆ子
 私が全学教育科目の中で最も印象深いのは一セメスターで受講した「身体の文化と科学A」である。月曜日の一コマで、担当は医学部の山内裕一先生だった。

 内容は健康心理学で、心身の相関性が特に強い病気、例えばうつ病、肥満、やせ、嗜癖行動などについて、理論と事例の両側面から理解していくというものだった。

 山内先生は医師として実際に治療にあたっていらっしゃったので、一つ一つの事例は非常に詳しく、説得力があった。

 事例の説明では、患者が来院した時の様子、精神状態、本人や家族と話し合って病気に至った背景を探る過程、治療内容などまで一つ一つ聞くことができた。

 普段患者としてしか医療に関わったことのない私(大方の人がそうだろうが)には、治療する側の視点で医療を見るという貴重な体験ができたと思う。

 しかしそのような物珍しさ以上に健康心理学という初めて触れる学問そのものに私は魅かれていった。

 特に私が興味を持ったのは交流分析である。これは人の自我をP(親の心)、A(大人の心)、C(子供の心)の三つに大きく分類し、二人以上の人間が交流する時に各々が三つのうちのどの部分の自我を使っているか分析するというものである。あまりなじみのない言葉かも知れないが、最近よく聞くAC(アダルトチルドレン)というのもこの交流分析の用語である。

 他人との交流、つまり人間関係(特に家族関係)が上手くいっていないことが病気の原因になることが多いらしいので、原因を探る時はもちろん、治療を進める際に医師と患者の関係を良好に保つためにも、交流分析は使われるそうだ。(専門外の人間なので説明はこの辺まで…)

 さらに詳しく知りたくなった私は本を手に入れ自分で勉強してみることにした。三冊勉強した時点で「二年生からはこれを専門にしたい」と思い、先生にどの専攻に行けばいいか相談した。しかし大学院にしか専門に学べる所はないと知り、非常にがっかりしたことを覚えている。

 学部で詳しく勉強することはできなかったが、私の世界を広げてくれたこの出会いには感謝している。

 今年入学した一年生にも良い出会いがあるように祈るとともに、またそこから自分で一歩踏みこんで新しい世界を手に入れてほしいと思う。

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